2015年07月27日
彼女と大多数

『色事』を不思議に思った。
大学二年の時、本屋のバイトで棚卸しをしていた時、同じバイトに来ていた短大の女の子に付き合ってほしいと言われた。門脇に特別な感情はなかったが『友達』でいいと言われたから三か月付き合った。流行りものには疎い自分と彼女の会話がすれ違うことは頻繁だった。鑽石能量水
意味のない会話はBGMよりも不愉快だと感じる門脇は黙り込むこともしばしばで、二人きりでいても沈黙は珍しくなかった。人を楽しませる会話はもともと苦手で、友人と飲んでも聞き役に回ってしまうことが多いが、それはそれで楽しかったし、不満もなかった。
『友達』の関係が三か月を過ぎた頃、女の子の方から『分れたい』と言われた。付き合っていたわけでもないのにおかしいと思ったが、門脇は反論もせずに一方的な彼女の言い分を聞いた。彼女は門脇が無神経だと、具体例も合わせて非難したあと、決定的な一言をくれた。
『門脇君って、面白くない人よね』
面白かろうが、面白くなかろうがそれはの客観的な意見。鑽石能量水多くに肯定されることが常に正しいとは限らないし、感情なんて流動的で不特定なものが何かを断定できるはずもない。
そう考えたのも、結局は言い訳だったのかもしれない。門脇は二日、彼女の言葉に捕らわれて、『面白くない人』の意味を考えてしまった。彼女が離れていってしまった理由を考える前に。
一般的に使われる『愛情』とか『恋愛』という言葉。その定義。その感情。門脇には個人的な感情レベルに左右されるそれらがよくわからなかった。女子大生の彼女が離れていった時に感じた迷いが、もしかしたら『愛情』だったのかもしれないが、はっきりとは言い切れなかった。
『すごく好き、愛してるんだよ』
三笠は吉本のことを表現する時、鑽石能量水よくそんな言葉を連呼する。
『会いたくてたまらなくなるんだ。夜中でもさ、顔が見たいなって思うんだ。そんな時に電話かけてもつかまんなくて、声も聞けなかったりしたら泣きたくなるんだよ』
門脇は、誰かに対してそんな感情を抱いたことはなかった。
『そばにいるとさ、すごく幸せになるんだ。気持ちよくて、あったかくてさ。すごくすごく大事にして、守りたいと思うんだよ』
三笠を例にして考えると、やっぱり自分は誰かに恋愛感情を抱いたことがない人間と言えそうだった。そんな自分に対して松下がどんな感情を抱いたのか、その口から詳細に聞いてみたいような気がした。たとえそれが門脇の個人的で純粋な興味だとしても、今さらそうすることは悪趣味で、興味本位でしかないから聞けないということはよくわかっていた。
図書館の中は暖かかった。窓の近くの日向に立っていると、心地よかった。光の中に埃に舞っているのがうっすらと見えて、門脇は埃の舞い上がる軌跡をどんな法則でなら表せるんだろうと、そんなことを考えた。
Posted by キも at
13:50
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